凋落の馬産ビジネス 期待は香港競馬

執筆者:富岡一平2007年7月号

 不況にあえぐ北海道の馬産地が七月から始まる競りシーズンを控えて、香港に熱い視線を注いでいる。「経済動物」ともいわれるサラブレッドの国内生産頭数は一九九二年の年間一万四百七頭をピークに減少を続け、二〇〇六年には七千六百五十五頭まで落ち込んだ。馬産地では生産者の廃業が相次ぐ。 背景にあるのは国内の競馬ビジネスの凋落だ。九七年に四兆円を突破した日本中央競馬会(JRA)の売上は減少を続け、昨年は二兆九千億円を割り込むまで縮小した。〇一年に中津競馬(大分)が廃止されるとドミノ倒しのように計八場が閉鎖。地方競馬の廃止も、競走馬の需要を大きく冷え込ませた。 馬産地にとっての“福音”が届いたのは昨年十一月。日本が国際セリ名簿基準委員会(ICSC)の区分で「パート1」国に昇格したのだ。 売上こそ世界最高のJRAだが、その閉鎖性から二流扱いだった。だが、国際化計画の一環で、外国馬が出走できる国際交流レースを拡大させ、サラブレッド発祥の地であるイギリスやフランスなど“競馬先進国”十五カ国と肩を並べるに至った。 これで、日本の競走馬の成績と血統が国際的な評価を受けるようになり、馬産地にとっては「日本産馬の国際競争力が高まり、近隣アジア諸国を中心に日本産馬輸入の機運を高め、輸出を促進する」(JRAホームページ)条件が整った。

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