中国・河南電視台(テレビ局)が、山西省洪洞県の複数のレンガ工場に、河南省など各地から「約千人の子供や身体障害者ら」が誘拐・拉致されたり騙されたりして送り込まれ「奴隷のように働かされている」と伝え、全土を震撼させた。六月中旬の国務院常務会議(温家宝首相主宰)は、于幼軍・山西省長を招き事態の説明と謝罪をさせるなど、中央にも波紋を広げた。テレビが最初に取り上げたレンガ工場主の父親は現地の党支部書記で、かねて腐敗の元凶とされる「官商黒(党政府幹部・商売人・黒社会)」結託の最も悪質なケースとして、最高指導部も厳しい対応を迫られた。 だが中国政府筋は「事件は氷山の一角にすぎない」と断言。「何年も前から、党や国務院の内部文献は、奴隷労働の存在を指摘している」とし、「なぜテレビ局が現地を取材できたのかに注目せよ」と続けた。河南省のトップ、徐光春書記は、新華社上海支局長だった八〇年代半ばに江沢民前総書記との関係を築き、江の昇進につれて着々と出世した“江べったり派”。一方、山西省のトップは胡錦濤総書記を支え江派と対立する共産主義青年団派のホープ、張宝順書記。第一報を伝えた河南電視台の記者は今やネットなどで英雄扱いだが、「肝心なことは口にしていない。たとえば、取材クルーの安全確保のため、徐書記は関係部門の人員まで同行させた」と政府筋は明かし、公安を含む「河南当局の支援がなければ不可能な取材だった」という。

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