サファリを楽しむため世界中から年間百万人近い観光客が訪れる東アフリカのケニア。日本人も年に約二万人が観光に訪れるこの国で、「アフリカのマフィア」と恐れられる地元武装犯罪組織と警察が熾烈な戦いを繰り広げている。首都ナイロビでも五月以降、銃撃戦が相次いでおり、日本外務省は注意を呼びかけている。 問題の組織は「ムンギキ」と呼ばれ、ケニア最大の民族キクユ人の若者を中心に構成される。一九九〇年代から活動を本格化し、二〇〇二年の非合法化後も勢力を拡大。構成員数万人とも言われる。「キクユ至上主義・反西洋文化」を唱える民族主義的な一面があり、スラムの住民やタクシー会社などに「みかじめ料」を要求。多数の武装強盗や身代金目的の誘拐に関わっているとされ、対立組織の構成員や言うことを聞かない者は、頭部を切断して「晒し首」にする。 今年に入って警察が摘発を強化したところ、警察官とその家族の殺害が続発、ムンギキの犯行とみられている。激怒したキバキ大統領は「ムンギキの壊滅」を宣言し、警察は五月のスラムでの銃撃戦で三十人以上の構成員を射殺、六月にも二十五人を射殺した。逮捕者は二千人を超えたとの情報もある。 ムンギキは前回(〇二年)大統領選で、キバキ大統領の対抗馬である現野党「ケニア・アフリカ民族同盟」の候補者を支援したとされ、その力は政界にも及んでいる。今年十二月に大統領選を控える大統領にとって「ムンギキ壊滅」は治安回復と再選の一石二鳥につながるのだろうが、前途は多難だ。

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