成果の乏しかった七月一、二両日の米露首脳会談は、ロシア側が、黒海に面したリゾート地ソチへの冬季五輪誘致に向けて周到に画策した外交工作の可能性が強まっている。 外交筋によれば、今回の米露首脳会談は、ロシアのプーチン大統領が五月中旬に訪露したライス米国務長官に「米国での開催」を提案。米側はロシアの積極姿勢からミサイル防衛(MD)問題での一定の譲歩があり得るとみて、北東部メーン州ケネバンクポートにあるブッシュ元大統領(父)の別荘にプーチン大統領を招待。名物のロブスターなど海の幸を振る舞った。 しかし、MD問題でロシアは追加提案したものの、進展はなく、米側を失望させた。 プーチン大統領はこの後、専用機でグアテマラに飛び、国際オリンピック委員会(IOC)総会に出席。英仏両語で演説してソチ開催を迫り、ロシア初の冬季五輪開催(二〇一四年)決定を達成した。「ロシアは米露首脳会談を五輪誘致のための国際的アピールに利用した。ロシアの強権政治へのIOCの懸念は、直前の米露首脳会談でやや緩和された」(外交筋)という。 あるIOC委員は「プーチン大統領が出席しなければ、ソチの逆転勝利はなかった」と述べたが、米露首脳会談開催もソチの勝利に一役買った模様で、ブッシュ大統領はダシに使われた可能性がある。

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