最近のブッシュ米政権と北朝鮮の接近ぶりに、日本政府とマスコミは揃って批判を強めた。 麻生太郎外相は六月二十二日、クリストファー・ヒル国務次官補の突然の訪朝について「焦って行って足元を見られかねない。訪朝は時期尚早」と不快感を露にした。「私たちも懸念を共有する」との社説を掲げた新聞もあった。 だが北朝鮮をあれほど毛嫌いしていたブッシュ政権が、なぜ強硬路線から融和路線に転換したのか、納得できる情報を提供してくれた日本の新聞は一紙もなかった。 二〇〇五年九月、六カ国協議が「北朝鮮の核廃棄」で合意したのと前後して、米財務省が北朝鮮と取引があるマカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)に対し愛国者法で立件したため、協議は中断した。ところが〇七年一月以降、ブッシュ政権の対北朝鮮政策が一変し、BDAで凍結されていた北朝鮮の資金が米政府の特別の計らいで返還された――。 一連の流れは日本の新聞もフォローしている。だが、なぜそんな結果になったのか、理由が理解できないのだ。「中国が絡んだため、徹底的に制裁できなくなったんだ」と北朝鮮・中国情勢に詳しい在京国際情報筋が解説してくれた。 筆者が入手できた公文書からも、この問題の背後に中国が控えている事情が読み取れる。たとえば、今年四月十八日の米下院外交委員会テロ・不拡散・貿易小委公聴会の議事録。

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