「分断パレスチナ」はどこへ向かうのか

執筆者:立山良司2007年8月号

「正義とイスラムに基づく統治の時が来た」――六月中旬、ガザ地区を武力制圧したパレスチナのイスラム組織ハマスはこう“勝利宣言”した。パレスチナ自治区のひとつ、ガザがハマスの支配下に入った衝撃は大きい。ガザを追われた世俗派ファタハはもうひとつの自治区、ヨルダン川西岸に非常事態内閣を樹立し、ハマスとにらみ合っている。この結果、西岸とガザは地理的にだけでなく、政治的にも分断されてしまった。 昨年一月、パレスチナ自治政府の国会に当たる立法評議会選挙でハマスが大勝して以来、ハマスとファタハは自治政府の権限、特に治安組織の指揮権をめぐり激しい権力闘争を繰り広げてきた。イスラエルとの和平実現を掲げるファタハと、イスラム教の立場からイスラエルの存在を認めないハマスには、政治路線でも大きな開きがある。ハマス支持者が多いガザでは六月初めごろから両派間の武力衝突が激化し、結果はハマスの圧勝だった。ファタハを率いる自治政府のアッバス大統領は、ハマスのガザ制圧をクーデターと断罪し、同派の武装組織を非合法化。ハマスを中心とする従来の内閣を解任し、ファタハ系の非常事態内閣を樹立した。対するハマスは従来からの内閣の正当性と存続を主張し、非常事態内閣を非合法と非難している。

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