[パリ発]左隣にライス米国務長官、右隣に潘基文国連事務総長を従え、フランスのベルナール・クシュネル外相(六七)が華々しく記者会見に臨んだ。六月二十五日、パリの凱旋門に近い国際会議場でスーダン西部ダルフール地方の人道危機への対応を協議する外相級会合を受けてのことだ。 就任一カ月あまりの外相にとって、これは各国メディアの注目を浴びる最初の機会だ。壇上のマイクの調子が悪いのを「これがいつものフランスですよ」と英語で冗談めかしながら、次々と質問者を指名し、自らその場を仕切って見せた。「世界最大の人道危機」への介入を訴える米国に対し、フランスは隣国のチャドや中央アフリカとの密接な関係にもかかわらず、傍観者として振る舞ってきた。しかし、五月のサルコジ大統領の当選とクシュネル外相の就任はイメージを変えた。外相級会合は、新政権の関与を示すために打ち上げたイベントだった。 そこには、クシュネル氏の個性が色濃く反映している。 消化器科医師だった同氏は一九六八年、ビアフラ戦争(ナイジェリア内戦)で赤十字の救援活動に携わって以降、世界の危機の現場を渡り歩いた。七一年には後のノーベル平和賞受賞団体「国境なき医師団」を、八〇年には「世界の医療団」を結成。社会党政権で人道活動担当相や保健相を歴任した後、九九年から二〇〇一年にかけて国連コソボ暫定統治機構の事務総長特別代表を務めた。

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