オペラ劇場総支配人の仕事

執筆者:大野ゆり子2007年8月号

 オペラ劇場は、この時期になると、そろそろシーズンを終える。秋に幕を開けるまで二カ月弱の休暇。劇場が閉まるのでトップである劇場総支配人も、ゆっくりとバカンスに出かけるのか、と思いきや、そうではない。名だたる劇場の総支配人たちが、夏の音楽祭の時期、南仏のエクス・オン・プロヴァンス、イギリスのグラインドボーン、ドイツのバイロイト、オーストリアのザルツブルクなどで、休憩時間にシャンパンを片手に情報交換し、配役を考えている歌手の声が自分の期待どおりかなどと調べている姿が見かけられるようになる。 オペラ劇場の総支配人というのは、なかなか日本で想像しにくい職業のひとつではないだろうか。オーケストラ、合唱団、大道具、衣裳などオペラに直接関わるスタッフ、事務職を加えると、相当な人数に給与を払うわけだから、健全な経営者としての責任、管理能力が問われるのはもちろんである。多くの劇場は国や自治体からの補助金を受けている。これはイコール税金である。お高くとまっていると思われがちなオペラ劇場だが、社会に貢献するという問題意識がなければ、今ではこの職は務まらない。以前、本欄で紹介した刑務所でのコーラスの活動や、貧困地域、老人ホームでの音楽指導、子供たちの教育プログラムなど各劇場は知恵を絞っている。

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