悪いことではない「分割政府」の出現

執筆者:田中明彦2007年9月号

 参議院議員選挙で自民党が大敗し、民主党が参議院の第一党となり、いよいよ日本も本格的な二大政党制に近づいてきた。自民党を支持するか、さもなければ民主党を支持するというパターンが多くの有権者の間で定着してきたといってよい。過去十数年の政治改革の成果が現われたのであって、その意味で、日本政治は健全化しつつある。 さらにいえば、批判は多いが、安倍首相が早々に続投の考えを明らかにしたのも健全化の現われではないか。首相を決定する専権が衆議院にある以上、参議院選挙の結果がいかなるものになろうと、それによって首相の地位が影響を受けるべきでないという安倍首相の考え方は、現在の政治制度が想定している考え方だからである。 もちろん、今後の国会運営の過程で、大平内閣や宮沢内閣の時のような衆議院における与党分裂で内閣不信任案が成立する可能性は存在する。そして、そのようにして内閣不信任案が成立して首相が替わるのであれば、それはそれでよい。なぜなら、それは衆議院の意思だからであり、その時の各議員の投票行動をみて、国民は次の総選挙での投票を考えることができるからである。 国際社会の中での日本のあり方を考えても、参議院議員選挙の結果を受けて首相が替わることは望ましくない。三年に一度必ず選挙のある参議院もまた、政権選択の機能を持つとすると、衆議院議員選挙とあわせて、場合によると、ほとんど一年半に一回くらいの割合で政権選択をすることになってしまう。

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