二〇一四年冬季五輪がロシアの保養地ソチでの開催に決まったことで、早くも隣国グルジアとの軋轢が浮上、祭典の「政治化」は避けられそうにない。 カフカス山脈の麓、黒海に面するソチの目と鼻の先には、グルジアからの独立運動が続くアブハジア自治共和国がある。北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指すグルジアへの圧力として、ロシアがアブハジア独立派を支援していることは公然の秘密。 グルジアのブルジャナゼ国会議長は七月末、ソチ五輪決定を受け「ロシアは五輪を隠れ蓑にアブハジアに投資してはならない。さもないとソチ五輪は、ソ連のアフガニスタン介入で西側にボイコットされた一九八〇年モスクワ五輪の二の舞だ」と警告した。 これに対しロシアは、八月六日、戦闘機二機がグルジアの首都トビリシから六十キロまで領空侵犯して、不発のミサイルを地上に撃ち込むという荒っぽい反応を見せた。 一方、ソチは、北カフカスにイスラム国家樹立を目指す過激派の温床ともされるロシアのカラチャエボ・チェルケシア共和国にも近いため、テロ攻撃を受ける危険性が指摘されている。このためロシア国内では、「困難な五輪はプーチンでなければ成功させられない」と、来年春で辞任する意向を表明しているプーチン大統領の“復権”にソチ五輪を絡める議論も出始めている。

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