六月に公表された昨年のわが国の合計特殊出生率は、六年ぶりに回復し一・三二となった。しかし、回復基調は依然として微弱にとどまる。 今回はまず過去の出生率の予測について振り返ってみたい。過去四半世紀にわたって国立社会保障・人口問題研究所(社人研、厚生労働省に設置されている国立の政策研究機関)が作成した「人口推計」は、将来的な出生率の向上を見込むという楽観的な予測を何度も何度も繰り返し、外れ続けてきた。 たとえば、一九八七年当時の出生率は一・六九だったが、将来的には一・九五まで回復していくと予測していた。また、九二年推計では当時の出生率一・五がいずれ一・八に、九七年推計では一・三九がいずれ一・六まで回復すると予測してきた。二〇〇二年推計でも、一・三三が一・三九まで回復していくと予測したのである。 これまでの予測はあまりにも楽観的、甘すぎたといわざるをえない。では、どうして出生率の見通しは、これまで常に外れてきたのだろうか。 第一に、社人研は人口学的な要因を見誤ってきた。社人研は少子化の主たる原因は晩婚化・晩産化であると見なし、一人の女性が産む子どもの数にはあまり変化がないと予想してきた。若い世代ほど結婚しなくなり、結婚しても子ども数が減っている事実に気づくのが遅かった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。