買収を仕掛けるのはファンドばかり、企業は防衛策に大わらわ。日本のM&Aがこんな状態なのは、内向きな会計基準のせいだ。 八月八日、日本企業が使う会計基準を決める企業会計基準委員会(ASBJ)が、日本の会計制度の大きな区切りとなるひとつの発表を行なった。会計基準決定の世界組織である国際会計基準理事会(IASB)と、会計制度の全面的な共通化で合意したのだ。 一九九八年の金融ビッグバン以降、日本は会計制度の国際的な調和を掲げてきたが、合併に関する制度が大きな違いとして残っていた。今回、来日したIASBのデービッド・トゥイーディー議長に対し、西川郁生ASBJ委員長が、日本も世界基準に合わせることを約束した。 話は十四年前にさかのぼる。一九九三年十一月、ノルウェーのオスロで開かれた国際会計基準委員会(IASBの前身)の定例理事会。世界中でばらばらだった会計基準を統一しようという提案に先進各国の代表が賛成する中で、日本だけが唯一反対した。十三対一。「経団連を中心に強く反対している産業界に対してポーズを示す必要があった」という内向きの理由からだった。だが、世界の流れに背を向けたその姿勢は、経済のグローバル化が進む中で転換を余儀なくされていく。実はオスロで反対した日本代表のひとりが若き日の西川氏だった。

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