北方領土返還要求への報復として日本の海上封鎖を唱えるなど、破天荒な言動によってロシアで脚光を浴びた極右政治家ジリノフスキー氏の「ロシア自由民主党」に退潮傾向が目立ち始めた。 十二月の下院選挙では四大政党の一角としての地位は維持するだろうが、旧ソ連崩壊後の混乱期に国民の不満を過激な民族主義に吸収した“歴史的”役割は、プーチン政権下の政治、経済の“安定”とともに終わりを迎えようとしている。 世論調査では、自民党の得票率は前回二〇〇三年の一二%から一桁台に落ち込む見通し。ジリノフスキー氏の知恵袋で日本通のミトロファノフ議員は八月、新しい政権与党の「公正なロシア」に籍を移し、大口の資金源だった大富豪ケリモフ氏も党を去るなど、有力者が次々と見切りをつけている。 自民党は、低所得層の票を野党の共産党から奪うための「裏与党」としても機能してきた。だが、左翼政党として政権が設立した「公正なロシア」が今後はこの役割を担い、従来の与党「統一ロシア」と合わせ、二大政党制を実現するのがクレムリンの青写真。ジリノフスキー氏は抜群の個人票を頼りに、今後は“タレント議員”として生きていくことになりそうだ。

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