世は挙げてスマートフォン時代に移行するのか。アップルに先んじてタッチパネル携帯の世界展開を仕掛ける女性経営者とは――。[台北発]台湾北部・桃園市にある亀山工業区。九月六日、下着や清涼飲料の古びた工場が並ぶこの工業団地の一角で、全面ガラス張りのモダンなビルの落成式が開かれた。スマートフォン専業メーカー、宏達国際電子が新たな本社兼研究開発センターをお披露目したのだ。「この十年で、次の十年で新たに飛躍する基礎を固めることができた」。創業十周年記念を兼ねた式典で、宏達の周永明総経理(社長)はそう挨拶した。社員は創業当時の五十人から六千人以上にまで増えているが、周総経理は本社ビルを新設せざるを得なくなるほどの成長力を今後も維持することに自信をみせた。 スマートフォンはパソコンに近い機能を持つ携帯電話端末の総称。汎用基本ソフト(OS)を搭載し、企業の情報システムと接続しやすいなどの特徴がある。米アップルが六月末に米国で「iPhone」を発売したのを機に世界的に注目度が高まっている携帯電話の種類だ。 落成式の一週間前の八月三十日、周総経理は東京にいた。宏達が供給し、NTTドコモが二〇〇八年三月までに発売するスマートフォン「HT1100」の発表会に出席するためだ。HT1100は液晶画面をタッチパネルにし、指で画面を触って操作する新たな方式を採用。これはiPhoneと同じである。

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