官僚組織がたかる「研修生利権」の甘い汁

執筆者:出井康博2007年10月号

 二〇〇六年に外国人研修・技能実習制度(以下、研修制度)で来日した研修生(滞日一年目)の数は過去最高の約九万三千人に達した。この四年間は毎年一〇%以上増加しており、今年は十万人を超すのが確実だ。研修制度で日本に滞在できるのは最長三年。二、三年目も含めた研修生全体の数は十六万人を超えている。 ただし、前回までのレポートからもわかるように、その大半が「研修生」とは名ばかりで、実態は国が受け入れを禁じる「単純労働者」に他ならない。研修生の受け入れ側は中小企業を中心に約二万社。日本人の若者が敬遠する仕事を、研修生が低賃金で担っているのだ。 単純労働者を表向きは合法的に受け入れる道具となってしまった制度が大きく変わる見込みはない。その背景には、制度誕生から現在に至るまで、研修生と彼らを受け入れる労働現場の間で利権にたかり続けている集団の存在がある。「参議院のドン」の述懐 研修制度の生みの親とも言える人物がいる。財団法人「ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団」(KSD、現・中小企業災害補償共済福祉財団)の創立者である故・古関忠男氏だ。 バブル真っ最中の一九八〇年代後半、中小企業の人手不足が深刻化した。滞在資格のない外国人を雇い、苦境を凌いでいた中小企業も少なくなかった。そのような状況で古関氏が目をつけたのが研修制度だった。

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