ローマ市長ベルトローニが集める期待と不安

執筆者:シルヴィオ・ピエールサンティ2007年10月号

[ローマ発]歴代のローマ皇帝は人心掌握のため、民衆に「パンと娯楽」を与えた。娯楽とはコロセウムでの剣闘士による殺し合いだ。しかし、現ローマ市長バルテル・ベルトローニは、ポール・マッカートニーらスターを招き、無料で野外コンサートを催した。古代ローマでは暴力と死の代名詞だったコロセウムを、全世界に「死刑廃止」を訴える象徴として甦らせたのだ。世界のどこかで死刑が中止され、延期されるたび、彼は喜びの証としてローマの中心に位置する築二千年の巨大競技場を一晩中ライトアップした。 一九五五年七月三日、ローマの中流家庭に生まれたベルトローニは、イタリア副首相を経て二〇〇一年からローマ市長の職にある。そして今、十月十四日に党大会を予定する新生・民主党の党首に彼が選出されるのは、ほぼ確実と見られている。 民主党の結成は、数十年ぶりの大きな出来事としてイタリア政治史に刻まれることになる。新党首は自動的に次期首相候補となり、遅くとも二〇一一年に行なわれる総選挙で民主党が過半数を獲得すれば、イタリア首相の座につくことになるのだ。 民主党結成の目的は、乱立する中道左派、左派、極左の政党を一つにまとめることだ。現状では、極左小政党のいずれかが離脱すれば、プロディ首相率いる中道左派連立政権は崩壊する。極左勢力はかねてから「首相が貧困層救済に積極策を採らないかぎり、政権を離脱する」と圧力をかけており、対する首相は「これ以上の予算を捻出すれば国家財政を危うくする」と抵抗する。

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