サルコジ「地中海連合」構想の深謀なき遠慮

執筆者:アダム・セージ2007年10月号

北アフリカを引き入れ、トルコを宥めと、結構ずくめに見える構想だが、根本的矛盾を抱え……。[パリ発]北アフリカ側からは、地中海は日に日に広がっているように見える。この静かな海を渡るのは、かつては簡単だった。だが今では、ビザや入国制限が立ちはだかり、警備艇がひしめく「渡れない海」だ。 それだけに、フランスのサルコジ大統領が地中海を囲む国々の間に政治的連携を築こうと提唱した時は、北アフリカ側の関心は盛り上がった。サルコジの構想は壮大なものだ。欧州諸国が何百年もの対立を乗り越え、平和と発展のためにEU(欧州連合)を作ったのと同じことを、地中海沿岸諸国でやろうというのだから。サルコジは、地中海をはさむ南側の途上国と北側の先進国で、独自の議会や委員会をもつ「地中海連合」を作ろうと提案している。 この構想が注目されるのは、ひとつには、ギリシャ人とローマ人の故郷である地中海こそ西洋文明発祥の地と見なされているからだ。一方で、近年の流れに逆らう構想であることからも、関心を集めている。この二十年、欧州が厳しい移民政策を採ってきたことは、北アフリカ側からは絆を断ち切る行為と見えた。ところがサルコジは再び門戸を開くと言っているように聞こえる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。