猛獣よりも恐いアフリカ「都市犯罪」の病理

執筆者:白戸圭一2007年10月号

[ヨハネスブルク発]三年後にサッカーのワールドカップが開かれる南アフリカ共和国では、国の玄関に当たるヨハネスブルクの国際空港に到着した旅行者が、宿泊先へ向かう途中や自宅に着いた途端に武装集団に金品を強奪される事件が相次いでいる。七月二十一日に一時帰国した南アのクマロ国連大使が、五日後には著名な聖職者が被害に遭い、一連の事件が注目を浴びることになった。 南アの殺人発生率は日本の約四十倍、米国の約七倍。世界最悪の治安水準だが、入国者の旅程を調べて強盗を企てる手口は、南アが直面する問題が単なる「犯罪の多さ」以上であることを物語る。警察が「入国者の旅程や所持品を知り得る空港内の官憲の関与」を捜査していることからしても、組織犯罪の氷山の一角である疑いが濃厚なのだ。 サハラ以南のアフリカ諸国では今、小規模な都市型犯罪組織が国境を越えてネットワークを形成し、社会を蝕んでいる。世界で一年間に行なわれる人身売買の約六割はアフリカを舞台にしているとみられ、国連薬物犯罪事務所(UNODC)は二〇〇五年の報告書で「犯罪はアフリカの発展を阻害する主因の一つ」と警鐘を鳴らした。南ア警察が〇五年三月からの一年間に把握した国内の犯罪組織数は二百七十三で、その前々年より六十五も増えている。大陸全体で見ると、(1)西アフリカのギニア湾岸(2)南アと周辺国(3)ケニアのナイロビを中心とする東アフリカ――の三地域が組織犯罪の拠点だ。

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