なぜかいま生産抑制 エタノールを巡る裏事情

執筆者:五味康平2007年10月号

 中国政府がバイオエネルギーの主役として位置づけていたエタノール生産に急ブレーキをかけている。原料となるトウモロコシの国内需給が逼迫し始めたためだ。 日本ではエタノール混合ガソリンの販売は、ようやく今春、首都圏の五十カ所のガソリンスタンドで始まったばかりだが、中国では日本とはケタ違いに普及している。エタノールを一〇%混合した「E10」ガソリンは遼寧省、黒龍江省、河南省など五省とその他の省の二十七都市で販売されており、すでに全国のガソリン消費量の約二〇%が何らかの形でエタノール混合になっている。モータリゼーションの進展でガソリン需要の急増に直面している中国にとってエタノールは、一時は救世主になるともみられていた。 しかし、エタノールを生産する政策の力点は余剰トウモロコシの活用にあったため、最近のトウモロコシ需要の急増で状況が一変した。 トウモロコシは豚、牛などの飼料や飲料、食品、工業材料まで幅広く利用されており、日本のスイートコーンのような食用は、中国ではむしろ例外的。飼料、工業用の需要はこの数年、激増しており、二〇〇〇年頃には年間生産量に近い量まで積み上がっていた在庫が、現在ほぼ解消されるまでになった。

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