「第二の農中」を目ざす政投銀の白昼夢

執筆者:大神田貴文2007年10月号

お公家集団が、投資銀行業務などこなしていけるのだろうか。改革の趣旨から言えば民営化は方向違い。改むるに憚らぬほうが……。 今後数年、日本の株式市場は公的機関の大型上場ラッシュを迎える。郵政民営化で誕生するゆうちょ銀行やかんぽ生命に始まり、道路公団民営化会社や東京メトロ(旧帝都高速度交通営団)、成田空港運営会社などが上場準備中だ。 いずれも業界内で独占的な地位と収益源を持つ政府系企業の株式上場は、これまでほぼ成功してきた。古くは一九八〇年代のNTTに始まり、九〇年代に上場したJR三社やJTも、それぞれ時価総額の上位銘柄として株式市場の中心にある。 だが、冒頭に記した一群の中に、高速道路や地下鉄のような圧倒的優位に立てる寡占事業がなく、はたまた郵便局のような巨大店舗網も持たないにもかかわらず、淘汰が進行中の業界に身を投じ投資家の評価を仰ごうとする「銀行」がある。日本政策投資銀行だ。 政投銀は日本開発銀行と北海道東北開発公庫(いずれも解散)の業務を引き継ぎ、一九九九年に発足した。名称に「銀行」の二文字が入っているとはいえ、実態は特殊法人である政府系金融機関だ。来年十月に政府を株主とする株式会社としてリニューアルし、二〇一三年前後に上場、政府が保有株をすべて売却することで晴れて「銀行」となる計画だ。

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