鳴かず飛ばずの東映が狙われる理由

執筆者:杜耕次2007年10月号

“世襲”の経営者のもとでヒット作を出せないかつての名門。不動産に目をつけたファンドが筆頭株主に躍り出て――。「故郷で名誉市民に選ばれ、感慨深いものがあります」 八月十日、東映名誉会長の岡田茂(八三)は出身地である広島県東広島市の名誉市民顕彰式でこう挨拶した。 日本映画界のドンとして脚光を浴びてきた岡田だが、一時期体調を崩し、昨年九月の俳優・丹波哲郎の葬儀では長年の部下である高岩淡・東映取締役相談役(七六)が代わりに弔辞を読んだこともあり、「重病説」も囁かれていた。岡田の消息をメディアが報じたのは久々のことである。 折しも東映では宿痾ともいえる株主問題が再燃している。不動産投資会社ダヴィンチ・アドバイザーズ(金子修社長)傘下のファンド「アルガーブ」が年初から株を買い進め、六月二十九日には持ち株比率が一一・八八%に達し、一一・八一%のテレビ朝日をわずかながら上回り、筆頭株主に躍り出た。 東映とテレ朝は安定株主対策として株式の持ち合いを進めており、東映のテレ朝株の保有比率は一六・一%で、朝日新聞社(三三・八%)に次ぐ第二位の大株主になっている。ダヴィンチの狙いは東映が保有する豊富な優良不動産とされ、今のところライブドア対フジテレビや楽天対TBSのように大手メディアの経営権を脅かす事態には到っていない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。