ロシアが新たな資源外交に乗り出そうとしている。原子力潜水艦技術を応用した船舶型の七万キロワット級小型原子力プラントを開発。当初はおもに国内向けとされていたが、アフリカへ“レンタル”する計画が進んでいる。 その背景には、「電力供給」というインフラの根幹を握り、アフリカの大地に眠る化石燃料や鉱物資源の権益獲得を狙おうという思惑が見え隠れする。 ロシア科学アカデミー幹部によると、船舶型原発の第一号機は二〇〇九年に完成し、ロシア北西部の白海で稼働する予定。極東向けにも量産する方針で、アフリカや中近東諸国への販売・レンタルも計画している。 経済発展を目指すアフリカ諸国にとっては、自国産の天然資源を輸出することがその早道だ。採掘設備を動かす電源が必要となるが、普通に発電所を建設すると膨大な資金がかかる。ロシアの船舶型原発をレンタルすれば、初期投資をせずとも安定した電力を得ることができる。 導入に関心を示すのはアフリカ南部のウラン産出国ナミビアや、西アフリカの島国カーボベルデなど十カ国以上。中国やインドネシアなども検討中だという。これらの顧客に対してロシアはまず相手国に有利な契約を結ぶと思われる。だが、契約の更新時に資源権益をめぐる要求を相手国が飲まない場合、船舶型原発をロシアへ戻すと宣言すればどうなるか。天然資源の輸出が波に乗るほど当該国は電力を欲する。この弱みにつけ込めば、ロシアは労せずしてアフリカの天然資源の権益を手に入れられるというわけだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。