ザ・チルドレンズの「狙い」に怯えるJパワー

執筆者:清水常貴2007年11月号

 電源開発(Jパワー)が、自社株の九・九%を買い占めた英国のヘッジファンド、ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)に怯えている。TCIは今年三月、Jパワーに二〇〇七年三月期の期末配当を三十円から百円に増額するよう要求したことで一躍、話題になった。株主総会ではTCIの増配提案をかろうじて否決に持ち込みホッとしたばかりだが、今年の株主総会はほんの小手調べに過ぎないかもしれず、先々の不安に駆られているのだ。 TCIは、米ハーバード大の大学院を修了後、ウォール街で腕を磨いたクリストファー・ホーン氏が設立したヘッジファンド。世界最大の鉄鋼会社ミタル・スチールによるアルセロール買収や、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドなどによる分割買収が濃厚になったオランダの大手金融会社ABNアムロでも株主提案し、名前が登場している。その一方、夫人が代表を務め、アフリカのエイズ感染児たちを救済する財団に収益を寄付する慈善活動も行なっている。ファンド名にチルドレンズと付いているのもそんな慈善活動かららしいが、単に増配を要求するだけなのか、それとも別の狙いがあるのか、今もJパワーを悩ませている。 Jパワーは全国六十七カ所の発電所で千六百三十八万キロワットを発電し、電力会社に売る卸電力会社。もともと国策会社として設立されたため、電力会社が電力不足に陥ったときに電力を融通できるように北海道と本州間、四国、九州と本州間に直流送電網を持つほか、東京電力から以東の五十ヘルツ地域と西側の六十ヘルツ地域間で融通し合えるように周波数変換所も所有している。

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