不法就労者が支える「世界のトヨタ」

執筆者:出井康博2007年11月号

 販売台数でGM(ゼネラル・モーターズ)を抜き、世界一の自動車メーカーとなったトヨタ自動車の本拠地、愛知県豊田市――。 市街地ながら人通りの多くない一角で、安っぽいネオンが光を放つ。ドアを開けると、出迎えてくれるのはずらりと並んだアジア系の女性たち。だだっ広い店内の中央に設けられたステージでは、初老の男性とホステスが身体を寄せ合いデュエットに興じている。天下のトヨタのイメージとは縁遠い、そんな外国人パブが、フィリピン出身のクリスティーナさん(仮名・二八)の仕事場だ。 豊田市は、東海地方を中心に点在する「外国人集住都市」のひとつである。約四十万の人口に占める外国人の割合は四%近い。しかも、その数にはクリスティーナさんのような不法就労者は含まれていない。 彼女は三年前、六カ月有効の「興行ビザ」で来日した。中国地方でホステスとして働いた後、「時給が高く、仕事も簡単に見つかる」と聞き、東海地方へと移ってきた。 豊田市に来て以降、生活は大きく変わった。ホステスの仕事は週三日に留め、平日の日中、プレス工場の作業員として働き始めた。同僚は日系ブラジル人など外国人女性がほとんどだ。「私はもうオバサン。ずっとカラオケの仕事(ホステス)はできないでしょ」

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