香港株式市場のハンセン指数は、直近の最安値である八月十七日の二〇三八七ポイントから、十月初旬までに約三六%も上昇した。中国本土の個人投資家による香港への直接投資を解禁する、いわゆる「香港株直通列車」制度の早期実施への期待が大きな要因だ。 市場の強気な反応も理解できる。たとえば百万人の個人投資家がおのおの十万元(約百五十万円)を投じて香港上場株を買うとすれば、ここ最近の香港市場の一日平均取引高に等しい資金が流入することになる。「直通列車」がひとたび軌道にのれば、一千万人近くの個人投資家が香港市場への参入を待ち構えている、と想像しても無理はない。 同構想は八月二十日、国家外国為替管理局(中央銀行である中国人民銀行の外為担当部門)が発表した。大陸にだぶつく資金を外に向け、貿易黒字に起因する金融システムの過剰流動性を減らし、人民元交換レートの上昇圧力を弱めたい――これが、中央銀行と外為局の狙いだ。 しかし目下のところ、「直通列車」は足止めを食っている。中国証券監督管理委員会(証監会)は、本土の上海・深センのA株市場から大量の資金が流出することを恐れて反対の意を示す。中国銀行業監督管理委員会(銀監会)は、同構想に「技術的問題がある」と指摘して実施を遅らせようとする。要は銀監会が主導権を握りたいのだ。

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