何やら無理矢理の加工貿易「禁止」措置

執筆者:八ツ井琢磨2007年11月号

 中国当局が、輸入原材料を国内で加工して輸出する「加工貿易」への締め付けを強めている。加工貿易を営む企業は関税・付加価値税が減免されているが、この一年で加工貿易の禁止・制限品目を増やす措置が矢継ぎ早に実施された。おもに化学、木材など約千品目が禁止、繊維など約二千品目が制限対象となり、全国で九万社、広東省だけで七万社以上とされる加工貿易企業に影響が広がる。 華南の発展を支えてきた加工貿易をここへきて締め付けるのは、労働集約型製品の輸出を柱とした成長モデルが限界に達したため。「無尽蔵」といわれた内陸部からの出稼ぎ労働者は頭打ちとなり、人件費が高騰。人民元高も加わり、沿岸部の生産コストは急速に上昇した。環境基準が緩かった時期に建てられた工場は汚染をまき散らし、積み上がる貿易黒字は諸外国との摩擦を生んでいる。 今回の制限には付加価値の低い産業を締め出し、環境汚染や資源・エネルギーの浪費を止める狙いがある。ただ、制限対象は沿岸部の十省・直轄市のみ。発展の遅れた内陸部や当局が管理しやすい輸出加工区に、従来型産業が誘導される。 しかし、産業移転を強引に推し進めれば、広東省の珠江デルタの競争力は確実にそがれる。珠江デルタの強みは、「転廠」と呼ばれる保税移送、つまり工場間での半製品の運搬で関税が留保されること。また、香港との貨物の出し入れを通じ、無数の中小工場がサプライチェーンで結ばれている。電子、玩具、アパレル、家具などの部品・半製品が、車で数時間内に調達できる産業の集積があるからこそ、低コスト、短納期の生産が可能となっている。他地域に分散すれば、この強みは失われる。

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