十一月三日に開幕したエジプトの支配政党・国民民主党(NDP)の党大会で、ムバーラク大統領が党総裁(任期五年)に選出された。 なぜこのことがニュースなのか。近年、イラクやイラン、レバノンなどの混乱や危機、紛争などの陰に隠れ、湾岸産油国の経済的繁栄にも注目が移り、エジプトは脚光を浴びることが少ない。しかしアラブ諸国の中で群を抜いた人口規模と分厚い中間層を抱えている、穏健で奥行きの深いエジプト政治の安定が、中東地域の秩序を根底で支えているものと筆者は考えている。 このエジプト政治の安定は、今後長期的に続くか、ついに動揺と大規模な変化の時期を迎えるのか。何事もなく執り行なわれたかに見える今回のNDP党大会も、息詰まる展開の一場面である。 NDPは政党というよりも、政権を支える行政機構という性質が色濃い。党員による選挙手続きを踏んだ総裁選出は今回が初めてである。八月と九月には地方の末端組織での七千五百五十五人もの代表選出投票が行なわれ、九月末から十月初頭にかけての都市や県レベルでの代表団選出を経て、十一月三日―五日の党大会での総裁選出という長期間にわたるイベントが催された。老いた大統領の「後釜」は

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