中東「危機の連鎖的発火」の恐怖

執筆者:立山良司2007年12月号

たぎりにたぎったマグマが、中東の至る所で噴出の機会をうかがっている。どこが発火点になってもおかしくない切迫度だ. ブッシュ米政権の外交努力のほとんどは、次々に問題が噴出する中東情勢への対応に追われている。 米国務省のウェブサイトによれば、今年初めから十一月中旬までのライス国務長官の中東訪問はすでに九回を数え、外国訪問の半分を占めている。ロシアや欧州連合(EU)諸国など中東以外を訪れた時も、中東情勢は不可避の議題だ。 中東ではこれまでもさまざまな危機が発生してきた。だが現在の中東では、泥沼化したイラクを含め多元的な危機が互いに連動しながら同時進行し、より深刻な状況を生み出している。 現在の中東を覆っているのは、イラクに加え次のような危機だ。●クルド労働者党(PKK)を制圧するため、トルコがイラク北部へ軍事侵攻する危険。●イランの核兵器開発疑惑や弾道ミサイル開発と、それに関連し、米国とイスラエルが単独あるいは連携してイランを攻撃する可能性。●アフガニスタンでのタリバンの復活とパキスタンの政情不安。●レバノン内戦再発の恐れ。●パレスチナでは、ハマスのガザ地区制圧とパレスチナ自治政府の分裂、中東和平プロセスの行き詰まり。

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