資金運用もままならぬ「ゆうちょ銀行」事始め

執筆者:鷲尾香一2007年12月号

「出来レースだ」。発足したばかりのゆうちょ銀行が静岡県の地方銀行であるスルガ銀行と合意した個人向けローン(住宅やカードなど)業務での提携を、多くの地銀関係者は苦々しく思っている。 実は、九月初旬、横浜銀、千葉銀など住宅ローン残高で上位の地銀十行の担当者は「個人向けローン業務における提携金融機関の募集・選定について」というメールを受け取っていた。送信者は、ゆうちょ銀の持株会社である日本郵政のプロジェクト・マネージメント・チーム。内容は、各行ごとに個人向けローンの取り扱い実績の開示と、ゆうちょ銀向け商品として提案できる商品の提示を求めたうえで、研修・人材育成や販売・事務処理の支援体制についても提案を要請するものだった。 ゆうちょ銀が三年後に予定している株式上場を成功させるには新規事業に打って出て収益力を高めなければならない。その柱が個人向けローンなのだが、自前で商品を開発・販売するノウハウはない。つまり、金融機関との提携に頼らざるを得ないというわけだ。 だが、地銀十行への打診はあまりに性急だった。提案の締め切りは九月十八日午後三時。多くの地銀は「わずか一週間程度で提携を決断し、さらには提携商品の選択から支援策まで回答するのは無理。最初から提携を求めていたわけではなく、要請したという“実績作り”が目的なのだろう」(大手地銀役員)と受け止めた。

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