十二月のロシア下院選を前に活動をエスカレートさせる「ナーシ(友軍)」。プーチンへの個人崇拝を公言する彼らはどこへ向かうのか。[モスクワ発]ロシアで「国民統一の日」という祝日に当たる十一月四日、首都モスクワの心臓部「赤の広場」は十―二十代の若者で埋め尽くされた。その数、一万人余り。「プーチン大統領のもと、国民が団結し偉大なロシアを築こう」のスローガンが響き渡る。 若者らは大統領の青年親衛隊「ナーシ(友軍)」のメンバーだ。街頭では、道行く人々に大統領への支持を呼びかける。「ザ・プーチナ(プーチン支持)」と答えた市民には赤いマフラーが贈られた。「大統領を支えると誓った大切な『声』を守るため、私たちのマフラーで『のど』を暖め続けてほしい。そんな思いを込めてプレゼントしている」とメンバーは説明する。 この日ばかりではない。十月七日のプーチン大統領の誕生日以来、ロシア各地の都市で、大統領を礼賛するナーシの集会が断続的に開かれている。こうしたナーシの街頭行動には、十二月二日のロシア下院選に向け、野党勢力の活動を実力で封じ込める訓練の意図も潜んでいる。 元ナーシ・メンバーがリベラル系週刊誌「ブラスチ」に明かした話によると、下院選投票日の二週間前からナーシは約十万人を動員し、モスクワ市内の主要な広場にテントを設営する。ロシアではプーチン政権のメディア統制で大半のテレビ、新聞は政府系企業の傘下に置かれており、野党は街頭集会でしか自らの主張をアピールできない。その街頭を、ナーシは治安当局と連携して制圧し、野党勢力に結集するスペースさえ与えない戦略だ。

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