米国の低所得者向け住宅融資(サブプライムローン)の焦げ付きが表面化して以来、金融市場は恐慌前夜を思わせる混乱ぶりだ。そんな中、欧米金融機関の巨額損失計上を横目に、農林中央金庫が暴落したローン証券の底値買いを狙っている。 五十兆円余りを運用する農林中金は、世界有数の機関投資家。バブル崩壊後の金融不安局面では「最後のリスク投資家」として、何度も相場の底値をさらってきた。 これまで証券化商品に約四兆円を投資、十月末までの損失は千五十七億円に上るが、今期の経常減益幅は三・七%にとどまり打撃は微々たるもの。損失に萎縮するどころか残高を七兆円に増やすという。 問題の根源は住宅ローンなのだが、金融市場はムードに流されるのが常で、住宅ローン以外の証券化商品も軒並み値を崩している。そこで農林中金は住宅関連証券を外し“連れ安”を食らった証券化商品に的を絞って資金を振り向ける作戦という。 日経平均が七千円台に急落した二〇〇三年前後、投げ売りされた株式や不動産は二束三文で米系資本の手中に落ちた。わずか数年で攻守入れ替わった格好で、農中に拍手喝采する日本の金融関係者は少なくない。

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