新市長誕生で高まる「大阪食い倒れ」の危機

執筆者:吉富有治2008年1月号

 約五兆四千億円。これが大阪市の抱える借金の額である(二〇〇七年度予算における一般・特別の両会計が発行する市債の総残高)。いくら政令指定都市とはいえ、ひとつの市が日本の年間防衛費(四兆八千億円)すら凌駕する借金を抱えているのは、異様というほかない。 市民一人あたりに換算すると、負債額は約二百五万円。夜間人口で大阪市をしのぐ横浜市(全国第二位)は約百三十万円、昼間人口で大阪市を上回る東京都(同一位)にしても約百万円。大阪市民は、ほかの大都市よりもはるかに重い荷物を背負わされているといえる。 〇七年度の市予算をみれば、景気の回復により少々の増加が見込めるにもかかわらず、税収は十年前より一千億円も減少している。三位一体改革で地方交付税の削減も進む。無駄な公共事業や、その結果としての赤字の補填に使われ、積立金も減る一方だ。大阪市は、早ければ二〇一一年度にも一千億円以上もの債務超過となり、財政再建団体に転落する可能性が指摘されている。人口二百六十万人の「巨大な夕張市」が誕生するのも決して荒唐無稽な話ではない。 その大阪市で、新しい市長が誕生した。福田政権の発足後、政令指定都市では初の市長選挙が十一月十九日に行なわれ、民主党推薦で元毎日放送アナウンサーの平松邦夫氏(五九)が初当選した。大阪市では一九四七年に市長選が公選制になって以降、助役を経験した市職員OBが市長の椅子に座ってきた。平松氏の当選でその形は崩れ、初めて民間出身の市長が登場することになった。

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