[アレクサンドリア発]昨年末から三カ月の在外研究で、エジプトに来ている。アレクサンドリア大学に客員教授として籍を置きつつ、日々の動きから距離をおいて、中東の近代史を振り返り、その中で現在の動きを見直してみようとしている。毎日のニュースはもちろん現地にいることでより細かく入ってくるが、それらは短期的な結果よりも、地域全体の長期的な変化にやがては結実する複雑な筋書きの、細やかな伏線としてみていくことが適切だろう。 ブッシュ米大統領は一月九日から十六日にかけて大規模な中東歴訪を行なった。パレスチナ問題の解決に向けてアメリカとしては最大限の努力をしたと印象づけること。対イランの包囲網をペルシア湾岸のアラブ諸国そしてエジプトとの間に醸成すること。どちらも短期的に成果は得られないものの、行なうべきことを淡々と行なっている。 ブッシュ中東訪問にあわせてイランの革命防衛隊船舶がホルムズ海峡で米戦艦に挑発を行なったのは、牙を抜かれたブッシュに更なる屈辱を味わわせようという、根源的な欲求に従ったまでだろう。イラクのフセイン政権崩壊時に世界に放映されたサダム・フセイン像引き倒しの際、群衆がサンダルを手にして像を叩いていた風景を思い出してみるといい。革命防衛隊はまさにそれをやってみせたわけである。

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