医師不足解消が謳い文句の「技術料」引き上げ。だが、おそらく何の効果もない。勤務医が泣き開業医が笑う報酬体系になっているからだ。 政府・与党は昨年十二月、公的保険から医療機関に支払われる社会保険診療報酬のうち、医師の診療行為などの対価である「技術料」の水準を、二〇〇八年度に〇・三八%引き上げることを決めた。薬剤や医療材料の価格引き下げで診療報酬全体は〇・八二%ダウンするとはいえ、「医師の賃上げ」に当たる技術料アップが行なわれるのは実に八年ぶりになる。 国の財政再建に医療費抑制が不可欠とされる中で、政府・与党が技術料引き上げに踏み切ったのは、病院の勤務医の待遇改善を進め、地方の公立病院などで深刻化している医師不足を解消するためだと説明されている。ただ、診療所を経営する開業医と勤務医の年収格差はおよそ一千万円もある。技術料の引き上げ分は金額にすると年間千二百億円。全国十六万八千人の勤務医一人当たりでは七十万円程度にしかならない。本気で収入格差を縮めようとすれば、開業医の収入を削り、その分を勤務医の給与に上乗せする必要がある。 数千項目に及ぶ診療報酬のどこを改定して勤務医の収入増につなげるかは、年明けから審議を再開した中央社会保険医療協議会(中医協)で決まる。しかし、中医協には開業医の同業者組合である日本医師会の代表が参加しており、その発言力は極めて強い。長年、医師会が影響力を行使してきたことで、現行の診療報酬体系は開業医有利になっている。

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