金融・資本市場改革の目玉として登場した総合取引所構想。大反対していた役人が豹変した理由は、やっぱり天下り先の確保だった。 一月四日、兜町の東京証券取引所。晴れ着姿の女性も交じる例年通りの華やかな雰囲気で行なわれた大発会の式典に、東証グループの社長として初めての新年を迎えた斉藤惇氏は異例のスピーチで臨んだ。「わが国は市場としての魅力を失いつつある。一刻も早く具体的な筋道を描くことが不可欠だ」――。 縁起をかつぐ兜町(シマ)のめでたい口開けに、危機感を煽らねばならなかったのには、相応のわけがある。原油高騰を背景にしたオイルマネーが世界を駆け巡り、新興市場ばかりか欧米の主要市場も活況を呈するなかで、日本市場には世界のおカネが入ってこない。いわば「日本パッシング(素通り)」とも言える状況に直面しているのだ。 二〇〇七年一年間の株価騰落率をみると、ほぼ二倍になった中国や、四割超上げたインド、ブラジルなどを横目に、日本の日経平均株価はマイナス一一・一%。世界の主要市場でほぼ最下位。下に位置するのはチャベス大統領の下で石油産業の国有化を進めるなど資本主義に背を向けたベネズエラほか数市場しか見当たらない。

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