洋の東西を問わず、いじめの蔓延は悩みのタネ。アメリカの教育現場での対応策をレポートする。 昨年十一月五日から八日まで、米フロリダ州で第四回国際いじめ防止会議が開催された。世界から集まったいじめ対策専門家は約四百人。日本からの発表者はなかったが、オーストラリアのケン・リグビー博士が「傍観者をいかに変えるか」をテーマに基調講演するなど傍観者の役割に焦点をあてた議論が目立った。 米国では最近、いじめ問題を解決するには加害者と被害者に対応するだけでなく傍観者を変えなければならないという考え方が広まっている。加害者をきちんと処置するのは当然ながら、数で圧倒的に勝る傍観者を立ち上がらせた方がいじめを抑止できるという考え方だ。 米国ではいじめは「bullying」と呼ばれ、言葉としては暴力的な意味合いが強いものの、実際に起こっているのは中傷、無視、暴行などで日本とほとんど変わらない。米国のいじめ対策は世界の先駆者・ノルウェーなどより少し遅れて一九八〇年代前半に始まったが、その後急速に進んでいる。その現場を取材した。 米国では政府の助成金や寄付などで運営されるNPO(民間非営利団体)がいじめ防止プログラムを開発し、学校に提供している。

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