ドン・プーチンとマイケル・メドベージェフ

執筆者:名越健郎2008年2月号

 ロシアのプーチン大統領(55)によるドミトリー・メドベージェフ第一副首相(42)の後継指名劇を見て、フランシス・コッポラ監督の映画「ゴッドファーザー」を思い出した。 シチリア・マフィアのボス、ドン・コルレオーネ(マーロン・ブランド)は、武闘派の長男らを避け、聡明で堅気の末弟マイケル(アル・パチーノ)を後継者に擁立した。タカ派のイワノフ第一副首相らよりも政権内最年少の穏健派メドベージェフ氏を可愛がったのと似ている。 メドベージェフ氏はサンクトペテルブルク出身の「サンクト・マフィア」内では珍しく、旧ソ連国家保安委員会(KGB)に属さなかった欧米寄りの民主派。しかし、マイケル同様ファミリー(サンクト派)の利権と権力は固守するだろう。 映画と違うのは、ドン・プーチンが引き続き「首相」としてファミリーの実権を握り続けることだ。 プーチン大統領がメドベージェフ氏を呼び、後継者に決めたことを伝えた。すると、メドベージェフ氏は大統領の前にひざまずき、手を取ってキスした。 プーチン大統領が言った。「どうしてそんなことをするのだ」「最近DVDで『ゴッドファーザー』を見たばかりなので」 プーチン大統領とメドベージェフ氏が交通事故で意識を失い、長い眠りに落ちた。10年後、2人は同時に目が覚めた。

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