英国の法律事務所リンクレーターズが先月、アジア諸国がアフリカに対して提供しているプロジェクト・ファイナンスに関し、レポートを発表した。これがちょっと驚くべき内容で、昨年の投融資額をみると、アジアのなかでは日本が断然トップで35.4億ドルにも達し、これは第2位の中国の3倍にあたるという。「アジアからのアフリカ投資にあっては中国が支配的というのが一般通念だが、これに反して日本はゆっくりと、しかし顕著にアフリカ大陸での影響力を伸ばしている」というのである。ちなみに第3位がインドで、第4位はマレーシアである。

 さらに興味深いのは、日本の投融資の3分の2はナイジェリア向けであり、中国のそれは半分が南アフリカ向けだという。リンクレーターズはアフリカの投資コンサルでも数々の実績をもつ国際法律事務所だから、信憑性は高い。

 南アフリカの重要性をじゅうぶん認識しながらも、マンデラ大統領時代やそれに続いたムベキ大統領時代は思うように進出できずにいた南アフリカに、中国は、現ズマ政権になってから一気に食い込んだ。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)グループに南アフリカを入れたのは中国だし、新開発銀行、通称BRICS銀行の支店も南アフリカに開かれることになっている。かつてアジア勢のなかでは南アフリカにおいて圧倒的なプレゼンスを誇った日本は、中国の攻勢で苦戦を強いられることになった。ついこのあいだまで日本の対アフリカ投資は、現在の中国のごとく半分以上が南アフリカ向けであったが、日中の立場が逆転しそうな形勢である。そしていまや、日本の対アフリカ投融資の大半がナイジェリアに投下されているというのは、驚きである。

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