原子力発電所の再稼働を認めるか否か――。裁判所の判断が電力会社を翻弄している。4月14日、福井地方裁判所は原子力規制委員会の新規制基準が「緩やかすぎて合理性がない」として、関西電力高浜原発(福井県)3、4号機の稼働差し止めを命じる仮処分の決定を下した。これに対し、鹿児島地方裁判所は同22日、新規制基準は「最新の科学的知見等に照らし、その内容に不合理な点は認められない」として、九州電力川内原発(鹿児島県)1、2号機の稼働差し止めを求めた住民の仮処分の申し立てを却下した。わずか1週間あまりのうちに180度異なる司法の判断が出たことで原発反対派と推進派はともに一喜一憂しているが、当事者の電力会社は勝っても負けても疲弊の度合いを増し、経営の先行きに漂う暗雲は晴れない。

 

「専門家の信用度」という問題

「裁判官の事実誤認だ」

 福井、鹿児島いずれのケースでも、決定が出た直後から関係者や支援者が発する同じフレーズがメディアで報じられている。

 福井地裁で決定を下した樋口英明裁判官(62)は、周知のように、関電大飯原発(福井県)3、4号機の運転差し止めを命じた昨年5月の判決で注目を集めた。中でも、福島やチェルノブイリの事故を引き合いに出しながら、原発の稼働が「生命を守り生活を維持するという人格権の根幹を具体的に侵害する恐れがある」と、憲法13条(幸福追求権)や同25条(生存権)に由来する「人格権」に言及した判決文は、一連の稼働差し止め訴訟に関わっている弁護士の河合弘之(71)が絶賛したように、「脱原発のバイブル」と崇められている。

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