[アレクサンドリア発]一月末、中国で大雪が降ったころ、中東の気象も大荒れだった。パレスチナでも雪が積もり、東地中海の南岸一帯は強い風と雨に晒された。エジプトのノーベル文学賞作家ナギーブ・マフフーズが、アレクサンドリアを舞台にした小説『ミラマール』でこの街を「雫の女王」と形容したように、冬季はエジプトにしては雨がちである。しかしそれにしても今年は例外的で、一月末は連日の激しい強風・雷雨に襲われた。滞在先のホテル前の広場でも、ケンタッキーフライドチキンの巨大な看板が落ち、電柱が折れてタクシーを直撃し、大破させた。 一月三十日、嵐の中を危険を避けながら外出し、数少ない無線LANのアクセスポイントで日本との連絡にメールを開こうとしていた。しかし一向に読み込まない。この日から数日間、エジプト全土でインターネット接続がほとんど不可能になった。目の前のアレクサンドリア港付近で二本の海底ケーブルが切断されていた(当初は船の碇が切ったとされ、エジプト政府はキプロス近海での地震が原因との見方も流すが真相は明らかでない)。 問題はエジプトに留まらない。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、そしてインドまでインターネット接続に多大な支障をきたした。コールセンター業が栄え、欧米企業のバックヤードと化したインドでの障害は国際的にも注目された。

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