地方創生と観光産業(山陰編)

執筆者:吉崎達彦2015年5月2日

「鳥取と島根に行ってきた」
と言うと、大概の人はこんな風に反応する。
「へー、なんで?」
 鳥取と島根の方には申し訳ないが、筆者の出身地である富山も似たようなところがあるので、ここはどうかお許し願いたい。要は日本海側の県に対して、少なからぬ人たちの認識フラッグが立っていないのである。

2013年版島根自虐カレンダーから。製作者の蛙男商会氏は東京出身だが島根在住

 ただし最近では、「鳥取県にスタバはないが、日本一の砂場がある」(平井伸治知事)、「妖怪が多いのが鳥取です、神様が多いのが島根です」(蛙男商会氏)などと、「心につき刺さる」PRが増えており、少しずつ理解は浸透しつつあるように見える。
 さて、時事通信社の「内外情勢調査会」と共同通信社の「政経懇話会」という全国組織がある。各県ごとに経営者や自治体関係者を対象に、定期的に講演会を催している。筆者は両方の講師をやっていて、これまでに前者を過去13年間にのべ114回、後者を過去8年間に37回務めている。これだけやると、大概の県からはお呼びがかかる。普通ではなかなか行く機会のない鳥取と島根も、この手があるから複数回訪れたことがある。
 つくづくこんなに贅沢な話はないと思う。講演料はさほど高くない(失礼!)けれども、滅多に行けない場所に仕事で行くことができて、地元を代表する方々と意見交換する機会があって、しかも通信社の支局の方が案内してくれる。彼らは地元の事情に精通しているので、何を聞いても的確な答えが返ってくるのである。
 昨今、大きなテーマとなっている「地方創生」は、現地を見ないで東京でいくら議論をしていても意味がない。そこで今回は、昨年夏に鳥取・島根を訪れた経験をもとに、「遊民経済学」の視点から「地方創生」を考えてみたいと思う。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。