北京オリンピック「テロ警備」の緊迫

執筆者:藤田洋毅2008年3月号

“大国”の面子にかけてもテロを封じ込めたい中国。しかし、その危惧と不安は尽きない。◇一隻の大型タンカーが山東省青島の海岸に向かっていた。警備中のミサイル駆逐艦が何度も「これ以上進めば封鎖海域に達する。ただちに引き返せ」と無線で呼びかけたが、タンカーからは応答無し。前進を阻止しようと前方に回り込んでもタンカーは速度を落とさない。喫水から見て相当量の原油を積んでいると思われ、大破すれば広範囲な海洋汚染の恐れもある。緊迫した交信の末、ついに海軍北海艦隊司令部は攻撃を命じた。スクリューを狙った魚雷は命中したものの、勢いのついたタンカーは依然、海岸へ一直線。撃沈命令が発せられ、駆逐艦は艦対艦ミサイルを放った。その瞬間、タンカーから巨大な閃光が走った。積み込んだ核兵器を爆発させたのだ。放射能は浮山湾の青島五輪ヨットセンターに雨とともに降り注いだ。◇五輪メイン会場の北京「国家体育場」(通称・鳥の巣=バードネスト)の隣の食堂と、近接する水泳競技会場「国家水泳センター」(同・水立方=ウォーターキューブ)で、地獄絵図が繰り広げられていた。食堂で給水機の水を口にした選手は泡を吹いて倒れ、体中に黒い発疹。救急隊の到着前に、周りにいた選手らにも発疹が広がった。何者かが、食材を運ぶトラック運転手を買収し給水機用のミネラルウォーターに細菌兵器を仕込んだのだ。空気感染を起こす可能性もある。感染拡大を防ぐため、多くの選手や報道陣らを残したまま「食堂は完全封鎖せよ」との緊急指令が下った。ドアや窓を壊し逃げ出そうとする選手らを、駆けつけた公安・武装警察・軍部隊はピストルで威嚇、封じ込めた。

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