「ネスレ」(本社スイス)がアフリカ事業の縮小を決めた。今年中にアフリカ21カ国での雇用を15%削減する。すでにウガンダとルワンダの事務所を閉鎖し、アフリカでの生産を半減するという。同社はいわずと知れた世界最大の食品飲料企業で、1916年に南アフリカへ進出したのを皮切りに、現在は赤道アフリカ地域21カ国に拠点をもつ。2008年からアフリカ事業の拡大に乗り出し、10億ドルを投資してきた。その、アフリカビジネスのベテランが、ここにきて方針を転換したのである。

 同社赤道アフリカ地域のクルメナッハCEO(最高経営責任者)は、「私たちはここを次のアジアだと考えてきた。だがアフリカの中間層は予想外に薄く、さして増えてもいないことがわかった」と語っている。したがってネスレは、新たに積み増すつもりだった中間層向け製品を撤収し、従来の貧困層向け製品のラインアップに戻すことを決めたのだ。

 アフリカ、とくにサブサハラ・アフリカの中間層については、アフリカ経済が急成長を始めて以来いろいろ取り沙汰されてきたが、その実態はよくわからないというのが実情だ。もっとも楽観的なところでは、アフリカ開発銀行が2011年に、総人口の34%、3億5000万人にまで中間層が拡大したという報告を出している。アフリカ開銀がいう中間層とは1日当たりの消費が2~20ドルというものだが、所得を階層化するにあたってこの幅は大きすぎないか。世界銀行の定義では、1日当たり消費が1.25ドル以下は絶対貧困層、2ドルは貧困層だ。2ドル以下にアフリカ総人口の半分以上が入っている。ここを中間層と呼ぶのは無理だと、私は思う。

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