中東の親日国アブダビとの切ってはならない絆

執筆者:中嶋猪久生2008年3月号

中東で自主開発油田を次々と失いつつある日本。最後の「日の丸油田」があるアブダビとの関係は、今後いっそう重要になるが――。「両国の関係は変わりません」 昨年十二月、ペルシャ湾岸の産油国クウェートを訪れたAOCホールディングスの小長啓一取締役相談役は、サバーハ首長(国家元首)からそう言葉をかけられたという。 AOC傘下のアラビア石油はクウェートで石油権益(カフジ油田)をもつ唯一の日本企業だった。クウェートとサウジアラビアの中間地帯に位置するカフジは、日本が最初に手がけた自主開発油田だ。生産開始は一九六一年。採掘した石油そのものを産油国と石油会社で分けあう「生産物分与契約」は二〇〇〇年(サウジ)と〇三年(クウェート)に失効し、その後はクウェートだけとの間で油田を掘らせてもらう五年間の「技術サービス契約」に移行していた。 クウェートからの石油は日本の原油輸入量の約八%(第五位)を占める。クウェートに人脈があるとされる小長氏は契約更新のために彼の地を訪れたのだ。昨年四月に安倍晋三首相(当時)が日本の首相としては初めて同国を訪れたのも、契約更新を後押しする狙いがあった。だが、砂漠の民は遠来の客に対し本音を隠していたようだ。今年一月四日、カフジ油田の契約は失効し、日本はクウェートにおける油田権益から完全撤退に追い込まれた。

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