金融庁「造船バブル」警戒は杞憂か

執筆者:村山敦2008年3月号

「儲かりすぎて怖いくらいだ」 このセリフが海運業界の住人の挨拶代わりになっている。二〇〇三年後半から始まった「未曾有の活況」の演出者は中国をはじめとする新興国で、タンカーやばら積み船で運ばれる原材料(原油や鉄鉱石など)を陸揚げしたさきから、海外市場向けに工業製品を載せたコンテナ船を送り出す。昨年末の用船料(船を貸し借りする際の料金)は過去のピークの三倍。それでも船の需要は募る。商機を逃さないために新しい船が必要だ――。 海運の好況で造船所もかつてないほど潤っている。世界の新造船建造量は〇二年から最高記録を更新し続け、〇六年は五千二百九万トン。このうちわが国は韓国とならんで四割近くを占め、千八百万トンを超えた。造船所は三―四年先までの“過剰受注”を抱えフル稼働している。 海運業は大きく四つの業者で成り立っている。船舶を所有する船主、用船にあたる海運会社(自ら船舶をもつことも多い)、造船所、そしてそれらに融資する金融機関だ。船主の造船所への支払いは、契約・起工・進水・竣工(引き渡し)など工程に応じてなされるのが一般的。船舶の大型化・高級化が進んだことで建造にはより多くの資金が必要だ。以前なら造船所が建造資金の一五%程度を自前で用意したものだが、受注が相次ぎ手元資金が逼迫した結果、ほぼすべてを金融機関からの融資で賄うようになった。かくして金融機関も好況の恩恵に与っている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。