2005年9月、デンマークの日刊紙『ユランズ・ポステン』が預言者ムハンマドの風刺漫画12作品を掲載した。当初は話題にもならなかったが、他の新聞が転載するうちにイスラム過激派の知るところとなり、この年の末から2006年初めにかけて中東やアフリカの国々で抗議運動が起きた。いくつかのデモは暴力的で、デンマークの国旗を焼いたりした。

 これを逆に「報道への圧力」と受け止めた欧州のメディアが、この12作品を再掲載することで『ユランズ・ポステン』紙への連帯意識を表明した。フランスでは、伝統的な大衆日刊紙『フランス・ソワール』が2006年2月1日号で12作品を掲載した。もっ とも、これには内部で批判が出て、編集局長が解任される騒ぎになった。

『シャルリー』が12作品を再掲載する特別号を仕立てたのは、『フランス・ソワール』の1週間後である。1面の表紙には、同紙のスター画家「カビュ」ことジャン・カビュが描いたオリジナルの風刺画を掲げた。「過激派についていけなくなったムハンマド」と題し、預言者と目される男性が頭を抱えて「くそったれに愛されるのはつらい」と嘆いている絵柄である。発刊の前日、フランス国内のイスラム系5団体がパリ大審裁判所(地裁)に対して発行停止の仮処分を申請したが、却下された。特別号は2月8日、予定通り発行された。

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