人民解放軍が、いよいよ大掛かりな組織再編と抜本的な軍事改革に踏み出す。2012年11月、中国共産党第18回全国代表大会(党大会)を機に総書記・党中央軍事委員会主席に同時に就いた習近平は、直後から「戦える軍」「戦って勝てる軍」への転換を強く訴えてきた。中国における政治スローガンは、いつの時代も裏返しにすると実態が浮かび上がる。中国共産党の独裁を支える最大の暴力的安定維持装置である解放軍は、実は「戦えない」「戦っても負ける」という危機感を率直に吐露したといってもよい。
「我が軍の軟実力(ソフトパワー)は鄧小平時代と大差ない。骨格は毛沢東時代を引きずっている」とかねて漏らしていた佐官級のある軍幹部は力を込めた。「習さんが準備している改革は、自分が知りうる範囲だけでも第2の建軍と呼んでも過言ではないほど徹底している。根底から解放軍全体を生まれ変わらせようとしている」。
 この幹部を含め党と軍中央の中堅幹部や国務院の老幹部、地方軍区関係者らの話を総合すると、「夏の間に有力長老や現役指導層に最終的な軍改革の叩き台を回覧して意見を聴取。10月に予定する第18期中央委員会第5回全体会議(5中全会)で正式決定し、具体的な作業に着手する」手はずという。不透明な部分も多いが、筆者が知りえた軍改革の輪郭とは――。

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