一方、大軍区の再編は、極めて大雑把に、現在の瀋陽軍区と北京軍区の大半・蘭州軍区の一部及び済南軍区の北側が北方戦区、済南軍区の残りと南京軍区が東方戦区、広州軍区と成都軍区の一部が南方戦区、残る蘭州軍区と成都軍区が西方戦区の基礎となる。大軍区はこれまで省・自治区・直轄市という行政区画をベースに区割りしていたが、山脈や砂漠、大型河川など自然環境や道路鉄道航空路など社会基盤に基づき純軍事的な条件のみを考慮して線引きし直すのだ。叩き台には「何度も練り直した末、ようやく引いた4戦区すべての境界を詳細に網羅した地図も添付してある」という。

「第二砲兵部隊」解体、「西方艦隊」創設

 第二砲兵部隊は解体され、同部隊が管轄している射程3000キロ以上のICBM(大陸間弾道ミサイル)とIRBM(中距離弾道ミサイル)は戦区陸軍、3000キロ以下のMRBM(準中距離弾道ミサイル)、SRBM(短長距離ミサイル)、GLCM(地上発射長距離巡航ミサイル)は攻撃目標や運搬手段により戦区の空軍か海軍に移管する。
 軍中央と連動し兵站など後方部門の統合も急ぐ。胡錦濤時代から済南軍区で実験してきた兵站を統合する「聯勤」体制を全軍に拡大する。資材購入や倉庫・車両・船舶・航空機の調達・運用などから財務、不動産開発・管理、衛生に到るまで、軍区の聯勤部が一括管理し無駄を省く。例えば現在、海軍の軍人は空軍の病院で診察を受けられないが、今後は陸海空天武警のいずれの病院も利用が可能になるという。
 なお、昨年暮れごろは5戦区体制になる見通しと耳にしていた。4戦区に加え、中国大陸の中央部・湖北省武漢に司令部を置く戦略予備部隊として「中央戦区」も検討されていたのは間違いない。なぜ「中央戦区」が消えたのかは不明だが、海軍の再編と関わっているのかもしれない。
 海軍は、北海(司令部・山東省青島)・東海(浙江省寧波)・南海(広東省湛江)という3艦隊が、それぞれ所属する戦区に合わせて北方艦隊・東方艦隊・南方艦隊と名を変え、戦区指揮下に入る。見逃せないのは、「インド洋からアラビア海にかけての水域を主な活動領域とする『西方艦隊』を創設する方針を決めたようだ」と複数の幹部。「正式に機関決定した」とする海軍のある幹部は、中国が提唱する「一帯一路」構想を実現するためには「一路(=21世紀海上シルクロード)を影響下におき、航路の安全を確保するのが前提」と言い切った。編成など具体的な陣容は策定中だが、「国産空母を主軸とする機動艦隊になる」。

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