地域大国・インドネシアとASEANの未来

執筆者:竹田いさみ2015年8月28日

 インドネシアの表玄関ジャカルタのスカルノ・ハッタ国際空港。ここに到着する度に、ひと昔前の東南アジアを思い出す。空港ターミナルビルは古色蒼然として非効率、旅行客への案内表示も不親切で、なおかつ不正確。東南アジアでは現在、いずれの国でも国際空港の近代化が進み、入国審査で待たされる時間は驚くほど短い。にもかかわらず、ジャカルタでは時がストップしたような錯覚に襲われる。とりわけ高度の効率性や合理性を極めたシンガポールから飛来すると、まさに真逆の世界が目の前に広がる。

ASEAN人口の4割

 明らかにインドネシアでは、他の東南アジア諸国とは異なる空気が流れている。その違いは一体何か。キーワードは「大国」の意地とプライドといったところだろうか。大国であるがゆえに、歴代の政権は悠然と構えて国家運営を行い、あくまでマイペース主義を貫いてきた。
 人口は約2億5000万人で、世界第4位。ASEAN(東南アジア諸国連合)の総人口約6億2000万人の中で、実にその4割をインドネシアが占める。国土面積は日本の約5倍で、15歳から64歳までの生産年齢人口の比率は約7割に達する。また群島国家と呼ばれるように1万3466の島々(地理空間情報局が2013年11月発表)を領有する。多くの民族が共生する多民族社会をハンドリングするだけでも一大事業である。シンガポール(人口約547万人)のような小さな国家とは比較できない規模で、巨大な国家運営を行い、国民を食わせなければならない。

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