ミュンヘン中央駅に到達するシリア難民

執筆者:池内恵2015年9月8日

 

ミュンヘンに集った中東関係者

先月ミュンヘンで、日本の中東関係者が集まる会議に呼ばれて話をした。そこでは「ドバイでもイスタンブールでもなく、なぜミュンヘンで?」というのは、中東に関与していれば誰でもが答えが分かるけれども、つい口にしてしまう問いであった。答えは明快で、企業の重役や最先端の担当者が各地から集まり、官庁や大使館の幹部職員と顔を合わせる会議で、少しでもセキュリティ上の問題があってはならない。会議そのものが狙われるなどということはもちろん万が一にもあってはならないが、会議の期間中どころか数カ月も前に予定地で何か人目を引く事件があるだけでも参加者が激減し、会議が成り立たなくなる。安全を重視し、中東を拠点とする参加者の便を考えれば、ミュンヘンという選択は妥当なものだという意見が多かったのではないか。

同時に、会議の参加者は、実際に中東に関与している立場からは、ある程度事情を知っていてやる気があれば、中東の全域がそれほど危ないとは感じておらず、さまざまな可能性を見出しているがゆえに関与しているのだから、日本からもっと積極的に関与する動きが出てくることを欲している様子でもあった。そうは言ってもやはり実際的には中東を避けて会議をしなければならないというところに、中東関係者のジレンマがある。

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